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限局性皮質異形成(指定難病137)

げんきょくせいひしついけいせい

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
大脳皮質における局所的な発生異常(神経細胞の発生、増殖及び遊走の障害)に関連した病巣により、主としててんかん発作を呈する。主に乳幼児~学童期に発症するが、中学生以降あるいは成人でも発症する。MRIにより限局性の皮質を主体とする特徴的な異常所見で検出される一方、MRI異常を欠き病理診断で明らかになる場合もある。大脳皮質神経細胞の配列が様々な程度に乱れる。病理組織学的所見の特徴からタイプ分類がなされる。大脳皮質のどこにでも生じうる。
 
2.原因
原因は不明であり、ゲノム遺伝子の異常も明らかでない。FCDタイプ2bの症例の一部に、細胞内情報伝達系分子mTORの体細胞変異が知られている。
 
3.症状
限局性皮質異形成の存在部位に応じててんかん発作症状は多彩である。乳幼児ではてんかん性脳症(てんかんが認知機能を進行性に障害する。)を呈することもある。長じては、主として部分てんかんを呈し、異形成を中心としたてんかん焦点の発作症状を示す。てんかん重積状態を来すこともある。
 
4.治療法
抗てんかん薬が積極的に用いられるが、難治である。異形成が画像診断で同定でき、臨床所見や脳波所見と一致する場合には外科治療が行われる。しかし、しばしば異形成の広がりを推定することが困難であり、十分な切除が行われないとてんかん発作が消失しない。また、異形成が機能的に重要な脳部位(運動皮質や言語領域など)を巻き込んでいる場合や、異形成が多発性の場合には、手術は困難である。
 
5.予後
てんかんが進行性に増悪することは少ないが、年齢とともに発作が軽減することもなく、てんかんは難治なままである。頻発する発作による社会的な支障は極めて大きい。けいれん重積状態になり重篤な後遺症を残すこともある。
 
 
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
数千人程度
2.  発病の機構
不明(原因解明の手がかりは得られていない。)
3.  効果的な治療方法
未確立(対症療法として抗てんかん薬治療が行われるが、難治である。)
4.  長期の療養
必要(生涯持続する。外科治療後も薬物の継続が必要なことが多い。)
5.  診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり)
6.  重症度分類
精神保健福祉手帳診断書における「G40てんかん」の障害等級判定区分及び障害者総合支援法における障害支援区分における「精神症状・能力障害二軸評価」を用いて、以下のいずれかに該当する患者を対象とする。
 

 

「G40てんかん」の障害等級

能力障害評価

1級程度

1~5全て

2級程度

3~5のみ

3級程度

4~5のみ

 
 
 
○ 情報提供元
「希少難治性てんかんのレジストリ構築による総合的研究」
研究代表者 国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター 院長 井上有史
研究分担者 新潟大学脳研究所 病理学教授 柿田明美
研究分担者 自治医科大学 脳神経外科教授 川合健介
 
 
<診断基準>
限局性皮質異形成(FCD)の診断基準
【FCDの分類】
FCDタイプ1:皮質神経細胞の配列の乱れ(皮質構築異常)。異型細胞を認めない。
       FCDタイプ1a:皮質神経細胞の縦方向(radial)の配列異常
       FCDタイプ1b:皮質神経細胞の横方向(tangential)の配列異常
       FCDタイプ1c:皮質神経細胞の縦横方向の配列異常
FCDタイプ2:皮質構築異常に加え、異型細胞(dysmorphic neuronやballoon cell)を認める。
       FCDタイプ2a:皮質構築異常+ dysmorphic neuronのみ
       FCDタイプ2b:皮質構築異常+ dysmorphic neuron及びballoon cell
FCDタイプ3:皮質構築異常に加え、病因論的におそらく異なる他の病変を伴う。
       FCDタイプ3a:皮質構築異常+海馬硬化症
       FCDタイプ3b:皮質構築異常+腫瘍性病変
       FCDタイプ3c:皮質構築異常+血管奇形
       FCDタイプ3d:皮質構築異常+その他の病変
 
A.症状
1.  種々のてんかん発作がみられる。
2.  乳幼児~学童期に多いが、中学生以降あるいは成人でも発症する。
3.  精神発達遅滞などの他の障害を伴うこともある。
 
B.検査所見
1.  血液・生化学的検査所見:特異的所見なし。
2.  画像検査所見:MRIで病変が捉えられるのは、FCDタイプ2bはほぼ全例、FCDタイプ2aは3割程度、FCDタイプ1は通常捉えられない。SPECTによる局所脳血流変化は診断の参考になる。
3.  生理学的所見:脳波では局在性異常波が記録される。特に反復性棘波が記録されるとFCDの可能性が高い。脳磁図による双極子の集積も参考になる。
4.  病理所見:FCDタイプ2は、皮質神経細胞の配列が激しく乱れ、異型細胞の出現を伴う。一方、FCDタイプ1は、皮質神経細胞の配列に乱れを認めるものの、異型細胞を伴わない。そこでは、皮質分子層における神経細胞数の増加、皮質第2層における神経細胞数の増加、神経細胞の集簇像、皮質下白質における異所性神経細胞数の増加、白質内異所性灰白質結節、あるいは多小脳回にみられる脳回パターンの異常が様々な程度と組み合わせで観察される。
 
C.鑑別診断:種々の腫瘍、血管病変、結節性硬化症などを鑑別する。
 
<診断のカテゴリー>
症状A1と検査B3から限局性皮質異形成を疑い、検査B2にて確定する。ただし、FCDタイプ2aの一部及びFCDタイプ1は検査B4にて確定する。
<重症度分類>
精神保健福祉手帳診断書における「G40てんかん」の障害等級判定区分及び障害者総合支援法における障害支援区分における「精神症状・能力障害二軸評価」を用いて、以下のいずれかに該当する患者を対象とする。
 

「G40てんかん」の障害等級

能力障害評価

1級程度

1~5全て

2級程度

3~5のみ

3級程度

4~5のみ

 
 
精神保健福祉手帳診断書における「G40てんかん」の障害等級判定区分
 

てんかん発作のタイプと頻度

等級

ハ、ニの発作が月に1回以上ある場合             

1級程度

イ、ロの発作が月に1回以上ある場合
ハ、ニの発作が年に2回以上ある場合             

2級程度

イ、ロの発作が月に1回未満の場合
ハ、ニの発作が年に2回未満の場合  

3級程度

 
「てんかん発作のタイプ」
イ 意識障害はないが、随意運動が失われる発作
ロ 意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
ハ 意識障害の有無を問わず、転倒する発作
ニ 意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
 
精神症状・能力障害二軸評価 (2)能力障害評価
○判定に当たっては以下のことを考慮する。
①日常生活あるいは社会生活において必要な「支援」とは助言、指導、介助などをいう。
②保護的な環境(例えば入院・施設入所しているような状態)でなく、例えばアパート等で単身生
活を行った場合を想定して、その場合の生活能力の障害の状態を判定する。
 

精神障害や知的障害を認めないか、又は、精神障害、知的障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通に出来る。
○適切な食事摂取、身辺の清潔保持、金銭管理や買い物、通院や服薬、適切な対人交流、身辺 の安全保持や危機対応、社会的手続きや公共施設の利用、趣味や娯楽あるいは文化的社会的活動への参加などが自発的に出来るあるいは適切に出来る。
○精神障害を持たない人と同じように日常生活及び社会生活を送ることが出来る。

精神障害、知的障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける。
○「1」に記載のことが自発的あるいはおおむね出来るが、一部支援を必要とする場合がある。
○例えば、一人で外出できるが、過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難である。 ○デイケアや就労継続支援事業などに参加するもの、あるいは保護的配慮のある事業所で、雇
用契約による一般就労をしている者も含まれる。日常的な家事をこなすことは出来るが、状況や手順が変化したりすると困難が生じることがある。清潔保持は困難が少ない。対人交流は乏しくない。引きこもりがちではない。自発的な行動や、社会生活の中で発言が適切に出来ないことがある。行動のテンポはほぼ他の人に合わせることができる。普通のストレスでは症状の 再燃や悪化が起きにくい。金銭管理はおおむね出来る。社会生活の中で不適切な行動をとってしまうことは少ない。

精神障害、知的障害を認め、日常生活又は社会生活に著しい制限を受けており、時に応じて支援 を必要とする。
○「1」に記載のことがおおむね出来るが、支援を必要とする場合が多い。
○例えば、付き添われなくても自ら外出できるものの、ストレスがかかる状況が生じた場合に対処することが困難である。医療機関等に行くなどの習慣化された外出はできる。また、デイケアや就労継続支援事業などに参加することができる。食事をバランスよく用意するなどの家事をこなすために、助言などの支援を必要とする。清潔保持が自発的かつ適切にはできない。社会的な対人交流は乏しいが引きこもりは顕著ではない。自発的な行動に困難がある。日常生活の中での発言が適切にできないことがある。行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。ストレスが大きいと症状の再燃や悪化を来しやすい。金銭管理ができない場合がある。社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。

精神障害、知的障害を認め、日常生活又は社会生活に著しい制限を受けており、常時支援を要する。
○「1」に記載のことは常時支援がなければ出来ない。
○例えば、親しい人との交流も乏しく引きこもりがちである、自発性が著しく乏しい。自発的な発言が少なく発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。日常生活において行動のテンポが他の人のペースと大きく隔たってしまう。些細な出来事で、病状の再燃や悪化を来しやすい。金銭管理は困難である。日常生活の中でその場に適さない行動をとってしまいがちである。

精神障害、知的障害を認め、身の回りのことはほとんど出来ない。
○「1」に記載のことは支援があってもほとんど出来ない。
○入院・入所施設等患者においては、院内・施設内等の生活に常時支援を必要とする。在宅患者
においては、医療機関等への外出も自発的にできず、付き添いが必要である。家庭生活においても、適切な食事を用意したり、後片付けなどの家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず、常時支援を必要とする。

 
 
 
 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続す
ることが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

本疾患の関連資料・リンク

大槻泰介ほか編. 稀少難治てんかん診療マニュアル—疾患の特徴と診断のポイント—. 2013. 診断と治療社.
 
日本てんかん学会編. てんかん専門医ガイドブック—てんかんにかかわる医師のための基本知識—. 2014.診断と治療社.


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情報提供者
研究班名 稀少てんかんに関する調査研究班
研究班名簿  研究班ホームページ 
情報更新日平成29年4月24日