肥大型心筋症(指定難病58)

ひだいがたしんきんしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

肥大型心筋症は遺伝性疾患とのことですが、肥大型心筋症患者の血縁者は症状がなくても心臓に異常がないか調べた方がよいのでしょうか?

はい。肥大型心筋症患者の約半数に家族性の発症が報告されております。肥大型心筋症は突然死などのリスクがあるため、肥大型心筋症患者の血縁者は症状がなくても肥大型心筋症がないか心エコー検査などでスクリーニング検査を受けることが推奨されます。

以前より高血圧のため降圧薬を飲んでいますが、最近心電図検査を受けたところ主治医から心臓が肥大していると言われました。私の心臓肥大は、この肥大型心筋症と関連があるのでしょうか?

心臓肥大は、肥大型心筋症以外に、高血圧や心臓弁膜症など他の疾患によっても起こることがあります。このため、心電図検査の心臓肥大所見のみで肥大型心筋症と診断することはできません。もし家族歴を含む病歴や心電図検査所見から肥大型心筋症が疑われる場合は、心エコー検査や心臓カテーテル検査など追加検査を行い、肥大型心筋症の有無を調べる必要があります。

非閉塞性肥大型心筋症、閉塞性肥大型心筋症、心尖部肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症などの病型があるとのことですが、経過や治療に違いがありますか。

肥大型心筋症全体の約4分の3は非閉塞性とされ、左室流出路(左心室から大動脈への出口の部分)に狭窄が存在する場合特に閉塞性肥大型心筋症と呼んでいます。このほかに肥大部位が特殊なものとして,心室中部閉塞性心筋症,心尖部肥大型心筋症が挙げられますが、このうち心尖部肥大型心筋症は東北アジア人に多い肥大様式と考えられています。一部の症例で拡張型心筋症様病態を呈することが知られており、拡張相肥大型心筋症と呼ばれています。我が国に多い心尖部肥大型心筋症は、概ね予後良好と考えられていますが、拡張相肥大型心筋症の出現率は約5~10%と報告され予後は特に悪く、心臓移植の適応となる場合があります。

肥大型心筋症はどの様な症状が出るのですか?

肥大型心筋症と診断されても、全く無症状で経過する場合もしばしばあり、治療薬を必要としない場合もあります。一方、肥大の程度が強かったり、左心室の広がりが悪くなったりする場合には、労作時に息切れを自覚したり、不整脈の合併によって動悸を強く自覚したりすることがあります。閉塞性肥大型心筋症の場合には、非閉塞性の場合より症状が強く出ることがあります。また、心房細動が合併した場合には、強く動悸を自覚することもあります。時には、血圧が低下したり、心不全を発症したりする場合もあります。症状が出現した場合には早めに医療機関を受診して下さい。無症状の場合にも、定期的に経過観察する必要がありますので、主治医と相談して下さい。

死因として若年者では突然死、特に運動中の突然死が多いとありますが、具体的に日常生活ではどの程度の活動をしたらいいでしょうか?

競技スポーツは、症状や左室流出路圧較差の有無に関わらず、一部の軽いスポーツ(ビリヤード,ボーリング,ゴルフなど)を除き禁止していただきます。失神の既往や突然死の家族歴などリスクの高い場合は殊に厳重に注意する必要があります。ただし30歳以上で、突然死のリスクが認められない患者では、個々の判断で競技に参考にできる可能性はありますので専門医からの運動処方が必要です。競技スポーツではなくレクリエーションとしては、テニス(ダブルス)、ハイキングなどの中等度の運動や、ゴルフ、スケートなどの軽度の運動は安定した状態であれば許可されることがあります。

肥大型心筋症と診断されました.日常生活で気をつけることはありますか?

心臓に負担がかかるような作業や運動は控えてください。ご自分でつらいと感じたら十分に休みをとって無理しないでください。また風邪をきっかけに症状が悪くなることがあります。外出時にはマスクの装着、帰宅時はうがい、手洗いを心がけて下さい。また引きかけたと思ったら十分休みを取ってください。アルコールは血圧を変動させ、心拍数を増加させることがありますので全般的に好ましくないと考えられます。過度のアルコール摂取は控えて下さい。喫煙によって冠動脈の痙攣が引き起こされることが報告されていますので、禁煙に努めて下さい。塩分の取り過ぎで心臓に負担をかけたり、体がむくんだりすることがありますので、塩分の摂取は控えて下さい。閉塞性肥大型心筋症と診断された場合は抜歯などの歯科治療を受ける際、感染性心内膜炎の予防のため抗生剤を内服しなければいけません。外来の担当医にご相談下さい。

肥大型心筋症と診断されると医療費が免除されるのですか?

医師が指定難病の診断基準に合致し、重症度分類等に照らして一定程度以上という判断をし、一定の手続きに従い都道府県に医療費助成の申請を行い、認められた場合、医療費助成の対象となります。


情報提供者
研究班名特発性心筋症の診断・ゲノム情報利活用に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日令和5年1月(名簿更新:令和5年6月)