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血液・凝固系疾患分野先天性プロテインS/プロテインC/アンチトロンビン欠損症(平成24年度)

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1. 概要

血栓症は遺伝および環境要因による多元病である。プロテインS (PS)、プロテインC(PC)およびアンチトロンビン(AT)欠損症は、日本人の3大先天性血栓性素因である。いずれも常染色体優性遺伝病で、ヘテロ変異保有者は深部静脈血栓症を、ホモおよび複合へテロ接合の重症型は新生児に電撃性紫斑病をおこす。深部静脈血栓症を発症した日本人成人の65%にこの3因子の活性の低下が、さらにその約半数に遺伝子変異が同定される。周産期および小児領域の全容については明らかではない。

2. 疫学

日本人のヘテロ変異保有者はPS 1.8%、PC 0.16%、およびAT 0.16%と推定される。各因子活性が低下する変異保有者は、血栓症を起こすリスクが高い。PS Tokushimaのヘテロ接合体者が、日本では最も多くこれが成人の血栓性素因に影響すると考えられる。PCおよびATには特に頻度の高い変異は同定されていない。小児の血栓症では遺伝因子と感染の関与が大きく、PC異常がとくに問題となることが推定される。

3. 原因

後天性素因(抗リン脂質抗体症候群、糖尿病や高脂血症など)と環境要因(感染やビタミンK欠乏など)からヘテロ変異保有者における血栓症の発症予測は難しい。新生児は各因子活性が生理的に低いため、確定診断には遺伝子解析が必須となる。活性型PCは抗凝固以外の生物学的作用があり、ヘテロ変異の電撃性紫斑病新生児や重症感染合併乳児、脳炎・脳出血との診断が困難な例も報告されている。3大因子のほかにも血栓症発症に関与するいくつかの遺伝子が明かとなっている。

4. 症状

成人は下肢の深部静脈血栓症を起こすことが多く、足のむくみ、正座不能、疼痛と赤紫色の腫脹をみる。この血栓の一部が流れて肺血栓塞栓症をおこすと胸痛と呼吸困難などをきたす。女性は習慣性流産をおこす。小児は血栓を発症しにくいが、播種性血管内凝固症候群などをきたす。ヘテロ変異でも二次的な因子低下要因があれば、電撃性紫斑病をきたす。四肢先端の壊死、紫斑、発熱、腎不全、ショックなどを呈し、脳梗塞・出血、硝子体出血などをおこす。

5. 合併症

肺血栓塞栓症と電撃性紫斑病は、早期に適切な治療が行われなければ致死的となる。生存例も脳梗塞・出血をきたすと神経学的後遺症(小児では精神運動発達障害)を残し、重度では寝たきりとなる。硝子体出血などでは盲に至る。その他、血栓による各臓器不全(腎、肺など)により長期管理が必要となる。電撃性紫斑病では、壊死した四肢の切断に至ることも少なくない。一度血栓症を発症した場合には再発予防が必須である。

6. 治療法

ウロキナーゼ、遺伝子組み替え組織プラスミノゲンアクチベーターなどによる血栓溶解療法や外科的な血栓除去術が行われる。再発予防にはヘパリンやワーファリンなどによる抗凝固療法を行う。経口避妊薬、長期臥床、肥満、感染症など血栓の誘因をさける。ATおよびPC欠損症に対しては、それぞれAT製剤と活性化PC製剤が使用可能であるが、新生児・小児の使用法は確立していない。

7. 研究班

新生児血栓症(プロテインC、プロテインS及びアンチトロンビン異常症)の効果的診断法と治療管理法の確立に関する研究班