眼科疾患分野|急性網膜壊死(平成24年度)

きゅうせいもうまくえし
研究班名簿 一覧へ戻る

1. 概要

本疾患は1971年に本邦の浦山らにより「桐沢型ぶどう膜炎」として初めて報告され(臨床眼科、1971;89:607-17)、その後欧米でも同様の疾患が報告され(Am J Ophthalmol, 1982;89:1309-16)、現在は急性網膜壊死(acute retinal necrosis)と呼ばれている疾患である。本疾患は免疫健常者の網膜に壊死病巣が生じ、急性に進行して続発性網膜剥離や視神経委縮をきたし失明する極めて予後不良な疾患で、ヘルペスウイルス(単純ウイルス1型、2型、帯状水痘ウイルス)の眼内感染が原因と考えられている。未だ診断基準がなく、発病早期における正確な診断と適切な治療がなされずに失明にいたる症例が非常に多い。

2. 疫学

世界規模の疫学調査、あるいは本邦での疫学調査はなされていない。2007年に本邦の大学病院眼科を対象におこなわれたぶどう膜炎疫学調査では、急性網膜壊死はぶどう膜炎患者全体のわずか1%前後であった(Jpn J Ophthalmol, 2007;51:41-4)。

3. 原因

ヒトヘルペスウイスルの網膜感染による。なかでも、単純ヘルペス1型(HSV-1)、同2型(HSV-2)、並びに水痘帯状ヘルペス(VZV)が主要原因ウイルスとして同定されている。

4. 症状

急性に主に片眼性に霧視、飛蚊症、視力低下で発病し、数週間の急性な経過で高度の視力低下を来し、数か月のうちに網膜剥離、視神経委縮、網膜血管閉塞、網膜変性萎縮などの重篤な眼合併症を生じて失明に至る。
発病初期の急性期には肉芽腫性前部ぶどう膜炎、高眼圧、硝子体混濁とともに、眼底周辺部に黄白色の網膜滲出斑が赤道部の並行して散在し、融合拡大する。この黄白色進出病変は網膜壊死病巣であり、後にその部分の網膜は希薄となり多発性網膜裂孔を形成し網膜剥離を生じる。

5. 合併症

網膜剥離、視神経委縮、網膜血管閉塞、網膜変性萎縮など重篤な眼合併症を生じて、多くは失明に至る。

6. 治療法

原因ウイルスを同定して、抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル)の全身投与あるいは眼内注射、抗血小板薬(バイアスピリン)の内服を第一選択とし、網膜剥離を合併すれば網膜硝子体手術を行う。

7. 研究班

難治性疾患克服研究事業『急性網膜壊死の診断基準に関する調査研究』