免疫系疾患分野|中條-西村症候群(平成24年度)

なかじょう-にしむらしょうこうぐん
研究班名簿 一覧へ戻る

1. 概要

慢性反復性の炎症と進行性のやせ・消耗を特徴とする、特異な遺伝性自己炎症疾患であり、1939年の中條、1950年の西村の報告以来、和歌山・泉南を中心とした関西と関東・東北から報告があります。幼小児期に凍瘡様皮疹にて発症し、結節性紅斑様皮疹や周期性発熱を繰り返しながら、次第に長く節くれ立った指、顔面と上肢を主体とする部分的脂肪筋肉萎縮が進行する疾患です。本邦特有の疾患とされてきましたが、2010 年に欧米・中東から報告されたJMP症候群・CANDLE症候群と臨床的に酷似しており、いずれもプロテアソーム機能不全症であることが明らかとなりました。

2. 疫学

これまで国内で約40例程度の報告があります。30-40歳代の報告が大半ですが、幼児例も存在しています。

3. 原因

免疫プロテアソームのb5iサブユニットをコードするPSMB8遺伝子のG201Vホモ変異が原因です。この変異によってプロテアソーム複合体による細胞内蛋白質分解機能が低下し、細胞内にユビキチン化・酸化蛋白質が蓄積する結果、炎症や組織変性が起こると考えられています。検索し得た本邦患者全てに同じ変異を認め、強い創始者効果が認められています。尚、JMP症候群のすべてとCANDLE症候群の多くの症例にPSMB8遺伝子のT75Mホモ変異が見出された一方で、CANDLE症候群では2症例にT75Mへテロ変異、ユダヤ人の1症例にC135Xホモ変異を認め、変異のない症例も1例確認されています。

4. 症状

幼小児期に手足の凍瘡様皮疹にて発症し、その後結節性紅斑様の皮疹、周期性発熱や筋炎症状を繰り返すようになります。早期より大脳基底核の石灰化を伴いますが、明らかな成長発達障害は認められません。次第に、特徴的な長く節くれ立った指と、顔面と上肢を主体とする部分的脂肪筋肉萎縮、やせが進行し、手指や肘関節の屈曲拘縮を来す場合があります。LDH、CPK、CRPやアミロイドが高値で、抗核抗体が陽性になることがあります。一方、ステロイド内服により逆に腹部や下半身の肥満を来す場合もあります。脂質代謝異常ははっきりしませんが、呼吸障害や心機能低下のために早世する場合が多いとされています。

5. 合併症

手指や肘関節の屈曲拘縮、やせ、筋力低下、肺・心臓・肝臓機能低下などが認められます。

6. 治療法

標準的治療法はありません。ステロイドの内服が行われ、発熱、皮疹などの炎症の軽減には有効ですが、萎縮や痩せには無効であり、むしろ長期内服による成長障害、代償性肥満、緑内障、骨粗鬆症など弊害が多いとされています。

7. 研究班

「自己炎症疾患とその類縁疾患に対する新規診療基盤の確立」研究班