(11)整形外科疾患|遺伝性多発性外骨腫(平成24年度)

いでんせいたはつせいがいこつしゅしょう
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1. 概要

骨外に発育する軟骨帽に覆われた骨性隆起(外骨種/骨軟骨腫) が,長管骨の骨幹端周囲あるいは扁平骨表面から生じ,全身各所に多発する常染色体優性遺伝性疾患である

2. 疫学

本邦での正確な頻度は明らかではないが、白人では5万人に一人の有病率が報告されており、稀な疾患ではない。EXT1の異常に伴う場合の方がEXT2よりも重症の表現型をとり、その頻度比は1:2~1:1である。しかしこれらの中で、四肢の短縮・変形、脊柱の変形など早期から重症の経過をとる頻度に関しての詳細は明らかではない。

3. 原因

EXT1 (8q24.11-q24.13)および EXT2 (11p12-p11)の遺伝子以上にともなう疾患であるが、それに対する原因療法はない。

4. 症状

良性骨腫瘍である外骨腫(骨軟骨腫)が多発し、それによる物理的な圧迫障害(骨性突起による疼痛、神経圧迫症状、関節可動域制限など)と成長期からの外骨腫近傍の成長軟骨や骨端軟骨の成長障害に伴う骨変形、低身長、四肢や脊柱の著しい変形などの症状を特徴とする。しかし、多くの例は無症候性であり、また有症候性のものでも多くは突起状、隆起状の骨の圧迫症状である。四肢や体幹の変形を生ずる重症例は少ない。

5. 合併症

骨成長の終了とともに、外骨腫の成長も停止する。稀に成長終了後に悪性転化(軟骨肉腫への悪性化が主で,頻度は2~4%とされる)することがあり、成人後の腫瘤の増大や疼痛の増強は悪性化を示唆する症状として注意する。成長期より四肢体幹の重度の変形をきたす例では、それに伴う二次的な合併症をきたす可能性が考えられるが十分な情報はない。

6. 治療法

無症状の場合は経過観察するだけであるが、疼痛を訴えるもの、外見上問題となるも、関節運動障害の原因となるものは切除の対象となる.再発を防ぐために軟骨帽の完全切除が原則である。四肢の変形や脚長差を生ずるものも切除の対象となり、またすでに生じた変形に対しては矯正骨切り術や骨延長術を併用する.

7. 研究班

重症骨系統疾患の予後改善に向けての集学的研究
前述の頻度にみるように遺伝性多発性外骨腫はさほど稀な疾患ではないが、これらの中で、四肢の短縮・変形、脊柱の変形など早期から重症の経過をとる頻度に関しての詳細は明らかではない。また幼少期より変形による症状をきたす障害の大きい患者に対しての十分な治療法はなく、早期診断、治療介入の方法、そのタイミングなど治療体系の開発と確立が重要である。本班研究では、歩行の障害や体幹の変形などの重度の障害に至る例の頻度と時期、罹患骨の状況を調査するとともに、根本的、早期からの治療の確立をめざす。