(11)整形外科疾患分野|低フォスファターゼ症(平成24年度)

ていふぉすふぁたーぜしょう
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1. 概要

低フォスファターゼ症は骨系統疾患の一つで、組織非特異的アルカリフォスファターゼ(ALP)の欠損が原因である。発症時期および症状の広がりに基づいて、胎内で発病する周産期型 、生後半年以内に発病する乳児型、小児期に発病し乳歯の早期脱落を伴う小児型、成人期に発病する成人型、症状が歯に限局する歯限局型の5つの病型に分類される。四肢短縮、内反膝、骨折、骨変形、低身長、痙攣、乳歯早期脱落などの症状を呈する。骨X線像では、くる病類似の所見を呈するが、血中ALP活性は低値である。

2. 疫学

周産期型低ホスファターゼ症は、10万出生に一人程度の頻度でみられる稀な疾患である。日本で最も頻度の高い変異であるc.1559delT変異は一般人口の480分の1の頻度でみられ、ホモ接合体となって周産期重症型として発症する確率は1/920000であると計算される。c.1559delTのホモ接合体以外で重症型となる比率を勘案すると、重症型は150000人に1人程度の発症となる。他の病型の頻度は知られていないが、周産期型より多い可能性がある。

3. 原因

組織非特異型ALPをコードするALPL遺伝子異常により、ALPの酵素活性が低下することにより発症する。今までに200以上の変異が報告され、登録されている(http://www.sesep.uvsq.fr/03_hypo_mutations.php)。本症は、ALPの活性低下により発症するが、症状とその原因の因果関係には不明な点が残されている。

 

4. 症状

四肢短縮、内反膝、骨痛、骨変形、低身長、痙攣、乳歯早期脱落などの症状を呈する。重症例では呼吸障害により致死的である。乳児型ではしばしば高カルシウム血症を伴い、体重増加不良を呈する。骨強度の低下により易骨折性となる。

5. 合併症

呼吸障害、体重増加不良、骨折

6. 治療法

確実な治療法はない。対症療法として人工呼吸、低カルシウムミルク、抗痙攣剤(ビタミン6)。先進的実験的治療法として骨髄移植。今後の期待として、リコンビナントALPによる酵素補充療法の治験が北米で行われている。

7. 研究班

重症骨系統疾患の予後改善に向けての集学的研究