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広範脊柱管狭窄症(指定難病70)

こうはんせきちゅうかんきょうさくしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
頸、胸、腰椎部の広範囲にわたる脊柱管狭小により、脊髄、馬尾神経又は神経根の障害を来す疾患をいう。
 
2.原因
現在のところ不明である。発育性の脊柱管狭窄を基盤に、局所の力学的要因、慢性外傷、全身的退行変性などが関与する。
 
3.症状
四肢、躯幹の痛み、しびれ、筋力低下、四肢の運動障害、脊髄麻痺、脊椎性間欠跛行を呈する。膀胱直腸障害を伴うことがある。同時に多部位が発症する場合や、別の部位が時間を経て発症する場合も多い。
 
4.治療法
保存的治療として、局所の安静保持を図るために装具の装着や、物理療法、薬物療法等が行われる。馬尾神経や神経根の障害を示す症例では、硬膜外ブロックや神経根ブロックが有効な場合がある。保存的治療が無効な場合や、脊髄麻痺が明らかな症例では、手術療法を行う。病態に応じて、前方除圧固定術や、後方進入による椎弓形成術、脊柱管拡大術などが行われる。
 
5.予後
多くは憎悪、軽快を繰り返し、次第に悪化して歩行が困難となる。転倒などの軽微な外傷により、急に症状が悪化し、重篤な脊髄麻痺を来すことがある。手術の時期を失うと、手術を行っても十分な改善が得られなくなる。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数(平成28年度医療受給者証保持者数)
5944人
2.発病の機構
不明
3.効果的な治療方法
未確立(局所の安静保持や手術療法を行う。)
4.長期の療養
必要(増悪、軽快を繰り返し、次第に悪化して歩行が困難となる。)
5.診断基準
あり
6.重症度分類
日本整形外科学会頸部脊髄症治療成績判定基準の上肢運動機能Iと下肢運動機能IIを用いて、頸髄症:I.上肢運動機能、II.下肢運動機能のいずれかが2点以下(ただし、I、IIの合計点が6点又は7点でも手術治療を行う場合は認める。)、胸髄症あるいは腰髄症:II下肢運動の評価項目が2点以下(ただし、3点でも手術治療を行う場合は認める。)を対象とする。
 
○ 情報提供元
「脊柱靱帯骨化症に関する調査研究班」
研究代表者 東京医科歯科大学 整形外科学 教授 大川淳
 
<診断基準>
1.概念
 主として中年以後に発症し、四肢・躯幹の痛み、しびれ、筋力低下、運動障害を主症状とする。脊髄麻痺のために重度の歩行障害を来すほか、いわゆる脊椎性間欠跛行のため、歩行困難となることもある。形態学的変化としては、頸・胸・腰椎部の広範囲にわたる脊柱管の狭小化が主体である。
 
2. 症状
 主として四肢・躯幹の痛み、しびれ、筋力低下、運動障害、脊椎性間欠跛行を呈する。排尿・排便障害を伴うことがある。これらの症状は増悪、軽快を繰り返し、次第に悪化して歩行が困難となる。転倒などの軽微な外傷機転によって症状が急激に悪化し、重篤な脊髄麻痺を来すことがある。
 
3.診断
 上記の症状(神経根、脊髄及び馬尾症状)と画像所見による脊柱管狭小化を総合的に診断する。
ただし、以下の各項に該当するものに限る。
(1) 頸椎部、胸椎部又は腰椎部のうち、いずれか2つ以上の部位において脊柱管狭小化を認めるもの。
ただし、頸胸椎移行部又は胸腰椎移行部のいずれか1つのみに狭小化を認めるものは除く。
(2) 脊柱管狭小化の程度は画像上(単純X線写真、断層写真、CT、MRI、ミエログラフィーなど)脊柱管狭小化を認め、脊髄、馬尾又は神経根を明らかに圧迫する所見があるものとする。
(3) 画像上の脊柱管狭小化と症状との間に因果関係の認められるもの。
 
4.鑑別診断
変形性脊椎症(神経学的障害を伴わないもの)
椎間板ヘルニア 脊椎・脊髄腫瘍
脊椎すべり症(神経学的障害を伴わないもの)
腹部大動脈瘤 閉塞性動脈硬化症
末梢神経障害 運動ニューロン疾患
脊髄小脳変性症 多発性神経炎
脳血管障害 筋疾患
後縦靱帯骨化症 、黄色靱帯骨化症
 
注1:後縦靱帯骨化が症状の原因であるものは、後縦靱帯骨化症として申請すること。
注2:本症の治療研究対象は頸椎部と胸椎部、頸椎部と腰椎部又は胸椎部と腰椎部のいずれかの組み合わせで脊柱管狭窄のあるものとする。
 
 
<重症度分類>
運動機能障害は、日本整形外科学会頸部脊髄症治療成績判定基準(表)の上肢運動機能Iと下肢運動機能IIで評価・認定する。
 
頸髄症:I.上肢運動機能、II.下肢運動機能のいずれかが2点以下
(ただし、I、IIの合計点が6点又は7点であっても手術治療を行う場合は認める。)
胸髄症あるいは腰髄症:II下肢運動の評価項目が2点以下
(ただし、3点でも手術治療を行う場合は認める。)
 
日本整形外科学会頸部脊椎症性脊椎症治療成績判定基準(抜粋)

I.上肢運動機能
0.箸又はスプーンのいずれを用いても自力では食事をすることができない。
1.スプーンを用いて自力で食事ができるが、箸ではできない。
2.不自由ではあるが、箸を用いて食事ができる。

 

3.箸を用いて日常食事をしているが、ぎこちない。
4.正常
注1 きき手でない側については、ひもむすび、ボタンかけなどを参考とする。
注2 スプーンは市販品を指し、固定用バンド、特殊なグリップなどを使用しない
場合をいう。

II.下肢運動機能
0.歩行できない。
1.平地でも杖又は支持を必要とする。
2.平地では杖又は支持を必要としないが、階段ではこれらを要する。

 

3.平地・階段ともに杖又は支持を必要としないが、ぎこちない。
4.正常
注1 平地とは、室内又はよく舗装された平坦な道路を指す。
注2 支持とは、人による介助、手すり、つかまり歩行の支えなどをいう。

※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 


参考文献

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http://www.nanbyou.or.jp/entry/1356
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17. Mindsガイドラインセンター. 腰部脊柱管狭窄症、第2章 診断
http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0102/G0000369/0015


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研究班名 脊柱靭帯骨化症に関する調査研究班
研究班名簿   
情報更新日令和元年6月