消化器系疾患・神経系疾患・皮膚疾患分野|遺伝性ポルフィリン症(平成23年度)

いでんせいぽるふぃりんしょう
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1. 概要

遺伝性ポルフィリン症はヘム合成系に関与する酵素群のいずれかの遺伝的障害に起因する代謝異常症である。消化器、血液、神経及び皮膚などに多彩な症状を生じる疾患である。7つの酵素欠損に対応した7つの病型がある。我が国で頻度が高いのは急性間欠性ポルフィリン症(AIP)、骨髄性プロトポルフィリン症(EPP)、多様性ポルフィリン症(VP)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)、先天性骨髄性ポルフィリン症(CEP)である。

2. 疫学

1920年から2008年まで、本邦で累計約900人の患者が報告されている。

3. 原因

急性間欠性ポルフィリン症はポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、骨髄性プロトポルフィリン症はフェロケラターゼ、多様性ポルフィリン症はプロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ、遺伝性コプロポルフィリン症はコプロポルフィリノーゲンオキシダーゼ、先天性骨髄性ポルフィリン症はウロポルフィリノーゲンIII合成酵素の、それぞれ遺伝子異常が原因であることはわかっている。現在種々の遺伝子解析が行われつつある。しかし、これらの遺伝子異常がなぜ生じるかは不明である。またなぜ様々な臨床症状が生じるかも不明である。

4. 症状

急性間欠性ポルフィリン症では発作症状として出現する。すなわち、腹痛・悪心・嘔吐・イレウス・尿閉・頻脈・不整脈・高血圧などを呈する。さらに意識障害・脱力・けいれん・麻痺・顔面神経麻痺・球麻痺・外眼筋麻痺などもみられる。骨髄性プロトポルフィリン症では重症慢性肝臓障害や肝硬変がみられる。皮膚症状としては露光部皮膚において紅斑・水疱・じんま疹・紫斑・疼痛などの光線過敏症状がみられる。そのため患者は屋外での活動を強く制限されてしまう。

5. 合併症

急性間欠性ポルフィリン症の発作症状は数日以内に回復する。しかし、重度の筋肉の脱力感から完全に回復するのに数ヶ月から数年かかるため、その間QOLの低下がみられる。時に身体障害の後遺症が残る。骨髄性プロトポルフィリン症では消化器系の合併症としては胆石や他の肝臓疾患がみられる。皮膚の後遺症としては瘢痕・多毛・色素沈着・皮膚脆弱性などがみられる。

6. 治療法

急性間欠性ポルフィリン症では発作を惹起する種々の薬剤を使用させないようにする。各症状に対してはそれらに対する対症療法を行う。またヘムやグルコースの点滴も有効であるが、それらの効果は一時的かつ限界がある。骨髄性プロトポルフィリン症では肝臓の症状に対して種々の治療が試みられているが、決定的なものはまだない。光線過敏に対しても様々な方法で光防御が試みられているが、どの方法も効果は限定的である。どの病型に対しても根本的な治療方法がないのが現状である。

7. 研究班

遺伝性ポルフィリン症の全国疫学調査ならびに診断・治療法の開発に関する研究班