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難治性の肝炎のうち劇症肝炎(指定難病ではありません)

なんちせいのかんえんのうちげきしょうかんえん

この病気は新たな制度の対象とならない為、医療費助成が受けられるのは平成26年12月末までです。
平成26年12月31日以前に認定されている方は、平成27年1月以降も医療費助成が受けられます。
(認定基準、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

■概念・定義

劇症肝炎とは、肝炎ウイルス感染、薬物アレルギー、自己免疫性肝炎などが原因で、正常の肝臓に短期間で広汎な壊死が生じ、進行性の黄疸、出血傾向及び精神神経症状(肝性脳症)などの肝不全症状が出現する病態である。わが国では、「初発症状出現から8週以内にプロトロンビン時間が40%以下に低下し、昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症を生じる肝炎」と定義され、この期間が10日以内の急性型と11日以降の亜急性型に分類される。

先行する慢性肝疾患が認められる症例は劇症肝炎から除外するが、B型肝炎ウイルス(HBV)の無症候性キャリアが急性増悪した場合はこれに含めている。また、リンパ球浸潤などの肝炎像が見られる疾患に限定しており、薬物中毒、術後肝障害、急性妊娠脂肪肝など肝炎像の認められない場合は劇症肝炎から除外している。

なお、プロトロンビン時間は40%以下であるが、肝性昏睡Ⅰ度までの症例は急性肝炎重症型と診断する。急性肝炎重症型は、その約30%が昏睡II度以上の肝性脳症を併発するため、劇症肝炎の前駆病態として重要である。また、肝性脳症が出現するまでの期間が8~24週の症例は遅発性肝不全(LOHF:late onset hepatic failure)に分類し、劇症肝炎の類縁疾患として扱われる。

■疫学

成人の劇症肝炎の年間発生数は1972年の調査では約3,700人と推定されたが、近年は減少傾向にあり、2005年の調査では約400人と推定されている。なお、厚生労働省の研究班の実施している全国調査では年間100例弱の症例が登録されており、1990年以降の年間発生数はほぼ一定と推定される。一方、LOHFの発生頻度は劇症肝炎の約1/10で、年間発生数は約50例と考えられている。

全国調査には2004~2009年に発症した劇症肝炎460例(急性型227例,亜急性型233例)、LOHF 28例が登録された。最近、HBVキャリア及び生活習慣病、悪性腫瘍などの基礎疾患を有する症例が40~50%を占め、その多くは薬物が投与されていた。

■病因

ウイルス性は全体の45%を占めており、病型別では急性型の63%、亜急性型の30%、LOHFの32%を占めている。ウイルス性はB型が最も多く、急性感染例とキャリア例の比は約4:3であった。急性型では急性感染例が35%、亜急性型ではキャリア例が19%を占めており、B型の19%は免疫抑制・化学療法によるHBV再活性化肝炎であり、その半数が既往感染者からの発症(de novo B型肝炎)と考えられた。

ウイルス性以外では、薬物性が15%、自己免疫性が10%、成因不明が29%を占めた。薬物性は急性型、亜急性型およびLOHFのいずれの病型でもみられたが、自己免疫性は亜急性型とLOHFで多かった。

■症状

劇症肝炎では、肝性脳症を除くと特徴的な臨床症状はない。急性肝炎と同様に急性期には消化器症状(悪心、嘔吐、食思不振、心窩部不快感など)、発熱、全身倦怠感などを認める。一般に急性肝炎では黄疸が出現するとこれらの臨床症状は軽快することが多いが、劇症肝炎では強い臨床症状が持続することが多い。

昏睡II度出現時にみられる症候で最も多いのは黄疸と羽ばたき振戦であり、全国集計では前者は97%、後者は79%で観察される。その他、腹水が59%、肝濁音界消失と肝性口臭が40~50%、呼吸促迫、頻脈および下腿浮腫が30~40%で観察される。

また、劇症肝炎、LOHFは高率に全身の合併症を併発し、多臓器不全(MOF:multiple organ failure)に陥る場合もある。合併症では感染症、腎不全およびDICが約40%で最も多く、脳浮腫が約20%、消化管出血は約15%に併発していた。

■検査

診断では肝性昏睡(II度以上)とプロトロンビン時間40%以下の両者が必須である。肝性昏睡発現時の肝機能検査では、急性型は亜急性型に比較して血清総ビリルビンの増加は軽度であり、血清トランスアミナーゼは高値を示す。プロトロンビン時間はいずれの病型では40%以下であるが、急性型でとくに著明に延長している。また、血清アルブミンは亜急性型で低値、血液アンモニアは急性型で高値を示す。

腹部画像所見にも各病型間で差異が認められ、超音波やCT検査で肝萎縮と判定される頻度は、急性型が約50%で低率であるのに対して、亜急性型で約70%、LOHFで約90%と有意に高率である。

■治療

劇症肝炎、LOHFの治療で最も重要なのは、成因に対する治療と肝庇護療法によって肝壊死の進展を阻止することである。このため1次医療機関と肝臓専門医の病診連携が重要で、急性肝炎重症型と診断された症例は、専門機関へ移送して可及的速やかに治療を開始すべきである。昏睡II度以上の肝性脳症を併発して劇症肝炎ないしLOHFと診断された場合は、血漿交換を中心とした人工肝補助療法を開始する。また、この時点で難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班が作成した肝移植適応基準スコアリングを用いて初回の予後予測を行い、死亡と予測される場合は家族に脳死および生体肝移植に関する説明を行い、肝移植実施施設へ患者情報を提供するとともに脳死肝移植登録を行う。家族内にドナー候補が現れた場合は、内科的集学的治療と並行して生体肝移植に向けた準備を開始する。全身状態が安定している患者でも、経過中に肝移植適応基準スコアリングを用いて予後を再予測し、死亡と予測された場合に肝移植を実施する。

成因に基づいた治療法と肝庇護療法は可及的早期から実施するのが望ましい。A、B型の急性感染例では末梢血血小板数が減少している症例がしばしば経験される。これらの症例では、肝類洞内凝固に微小循環障害が公汎肝壊死の原因であるとの想定から、肝壊死進展防止の目的で抗凝固療法を実施する。抗凝固療法にはATIII濃縮製剤と合成蛋白分解酵素阻害薬を用い、ヘパリンは併用しないのが原則である。B型キャリア例ではエンテカビルなどの核酸アナログ製剤を投与するが、その効果発現には数日を要するため、インターフェロンを併用した抗ウイルス療法を実施するのが望ましい。なお、B型急性感染例でも肝壊死が持続する場合や、キャリア例との鑑別が困難な症例では、同様に抗ウイルス療法を実施すべきである。一方、自己免疫性や薬物性の症例では副腎皮質ステロイドを短期間大量に投与する(ステロイド・パルス療法)。本療法は肝庇護や過剰免疫の抑制の目的でも有用であり、ウイルス性や成因不明例でも実施される場合がある。

全身管理としては、中心静脈を確保して、水、電解質、栄養及び循環動態を管理する。熱源はブドウ糖を中心とし、1,200~1,600Kcal/日を目安に輸液する。劇症肝炎では血漿アミノ酸濃度が高値であるため、アミノ酸製剤は原則として投与しない。人工肝補助療法は血漿交換が中心であるが、単独では肝性脳症の改善効果が不十分であるため、血液濾過透析を併用するのが一般的である。血液濾過透析には、短時間に高流量で置換するHDF(hemodiafiltration)と、24時間持続的に置換するCHDF(continuous HDF)がある。肝性脳症に対してはラクツロースを経口ないし注腸で投与し、腸管難吸収性の抗菌薬である硫酸ポリミキシンBを用いた腸内殺菌を実施する。昏睡Ⅲ度以上の症例では脳浮腫を高率に合併するため、上半身を軽度挙上させ、マンニトールを投与する。また、合併症に対する治療も重要であり、特に感染症を併発すると肝移植も実施できなくなるため、その予防は重要である。

■予後

急性肝不全の予後は病型に依存しており、内科的治療のみを実施した症例における救命率は急性型49%、亜急性型24%、LOHF 13%であった。成因との関連では、A型が特に良好であり、亜急性型を含めても57%が救命されている。一方、B型キャリア例と自己免疫性疑い例は、急性型、亜急性型ともに救命率が低く、その対策が急務となっている。なお、1998年以降は生体部分肝移植を実施する症例が増加しているため、これも含めた救命率は急性型54%、亜急性41%、LOHF 29%である。

難治性の肝疾患に関する調査研究班から


研究成果(pdf 26KB)

この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

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情報提供者
研究班名 消化器系疾患調査研究班(難治性の肝・胆道疾患)
研究班名簿   
情報見直し日平成27年3月18日