■概念・定義 |
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加齢黄斑変性は滲出型と萎縮型に分けられる。滲出型は黄斑部の網膜色素上皮細胞-ブルッフ膜-脈絡膜の変化により発生する脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization: CNV)とその増殖変化を本態とする疾患である。CNVは網膜色素上皮下、ついで網膜下に発育する。出血、滲出による網膜色素上皮剥離、網膜剥離を呈し、それらが吸収した後には萎縮・瘢痕が形成され、高度の永続する視力低下を生じる。進行が速い。萎縮型は黄斑部に網膜色素上皮-脈絡毛細血管板の地図状萎縮病巣が形成されるが、進行は緩慢である。 |
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■疫学 |
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欧米の研究結果 人口あたりの頻度:チェサピークベイ(米国)の住人を対象にした場合、50歳以上の1.8%が加齢黄斑変性であり、米国の人口に 換算すると75歳以上では640,000人が加齢黄斑変性であると推定されている。ビーバーダム(米国)の住人を対象にした場合、人口の1.6%、75歳 以上の7.1%、ロッテルダム(オランダ)の55歳以上の住人の1.7%、85歳以上の11%、ブルーマウンテン(オーストラリア)の49歳以上の住民の 1.9%、85歳以上の18.5%が加齢黄斑変性に罹患していると報告されている。滲出型と非滲出型の比はいずれの研究でも2:1である。性比は 1.9:1.6(ビーバーダム)、1.9:1.4(ロッテルダム)、2.4:1.9(ブルーマウンテン)と女性に多い。しかし、これらのスタディでは年齢をマッチさせて比べると性差は有意ではない。 我が国における調査結果 1998年に九州久山町の50歳以上の住民を対象におこなわれた調査では少なくとも1眼に滲出型を有する人は0.67%、萎縮型 を有する人は0.2%であり、人口に換算すると滲出型は約35万人、萎縮型は10万人になる。男女比は3:1で男性に多い。5年発症率は滲出型0.6%、萎縮型0.3%と報告されている。同じ久山町の2007年の調査では、有病率は1.3%に上昇し、滲出型1.2%、萎縮型0.1%であり、滲出型の増加が著しいことがわかった。2000~2002年に舟形町に住む35歳以上の住民を対象にした検討では、加齢黄斑変性は0.5%に見られたと報告された。加齢黄斑変性は滲出型は特に視力予後不良であり、社会的失明の主要疾患として来るべき高齢化社会の問題点になると予測されているので、以下滲出型について述べる。 |
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■病因 |
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網膜色素上皮細胞は視細胞の外節の貪食機能を始め神経網膜の環境を保持する上で重要な役割をはたしているが、加齢性の変化として、消化残渣物としてのリポフスチンの蓄積や網膜色素上皮細胞の脂質化が起こる。また、加齢とともに色素上皮下のブルッフ膜の肥厚が起こり、視細胞-網膜色素上皮-ブルッフ膜間の生理的環境に変化が生じる。最近ではこれらの過程に遺伝子変異が主に関与しており、環境要因も関係があると考えられるようになった。遺伝子としてはcomplement factor HやARM2/HTRA1の変異が報告されている。環境要因としては喫煙、日光暴露との関係がある。こうした変化によっておこった慢性炎症や虚血が脈絡膜からの新生血管の原因になると考えられており、新生血管の発生・発育に最も大きな作用を及ぼす生理活性物質として、血管内皮増殖因子vascular endothelial growth factor(VEGF)があげられる。CNVはブルッフ膜の破損部から網膜色素上皮下、網膜下へと進展してくる。 |
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■症状 |
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中心暗点、変視症、進行すれば非可逆的かつ高度な視力低下。 |
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■分類と診断基準 |
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厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮調査研究班から、以下の分類と診断基準が作成されている。 <分類> 前駆病変 : 軟性ドルーゼン、網膜色素上皮異常 加齢黄斑変性 : 滲出型加齢黄斑変性、萎縮型加齢黄斑変性 滲出型加齢黄斑変性の特殊型 : ポリープ状脈絡膜血管症、網膜血管腫状増殖 |
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診断基準 |
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年齢50歳以上の症例において、中心窩を中心とする直径6000μm以内の領域に以下の病変がみられる。 1.前駆病変 2.滲出型加齢黄斑変性 随伴所見:以下の所見を伴うことが多い。 3.萎縮型加齢黄斑変性 4.除外規定 |
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検査所見の解説 |
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蛍光眼底造影所見 1)フルオレセイン蛍光造影所見 以下のようなCNVの描出がみられる。 (a)Classic CNV (b)Occult CNV 2)インドシアニングリーン蛍光造影所見 3)光干渉断層計optical coherence tomography(OCT) |
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■特殊型 |
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1)ポリープ状脈絡膜血管症 確実例 : 以下のいずれかの1項目を満たすものとする ・眼底検査で橙赤色隆起病巣をみとめる ・インドシアニングリーン蛍光造影で、特徴的なポリープ状病巣*をみとめる 不確実例 : 以下のいずれかの1項目を満たすものとする ・インドシアニングリーン蛍光造影で異常血管網**のみをみとめる ・再発性の出血性・漿液製網膜色素上皮剥離をみとめる
参考所見:OCT所見
2)網膜血管腫状増殖 |
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■鑑別診断 |
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1)中心性漿液性脈絡網膜症 2)網膜細動脈瘤 3)黄斑網膜静脈分枝閉塞症 4)各種の血管新生黄斑症 |
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■治療 |
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中心窩外CNV |
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1)レーザー光凝固 2)CNV抜去術 |
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中心窩CNV |
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各種治療が試みられてきたが、現在の第一選択は抗血管内皮増殖因子薬(抗VEGF薬)のひとつであるRanibizumabの硝子体内投与である。その効果や副作用については長期的な観察が必要である。 1)抗VEGF薬 ・Ranibizumab 2009年、わが国においてRanibizumab(ルセンティス®)0.5mgが承認、販売された。RanibizumabはVEGF-Aの全てのアイソフォームを阻害できる抗VEGF中和抗体Bevacizumabの断片であり、マウス由来のヒト化モノクロナール抗体である。Ranibizumabの分子量は 48kDであり、しかもBevacizumabのアミノ酸配列を一部変更してあるため、硝子体内投与によって網膜を浸透しやすく、VEGFへの親和性は Bevacizumabよりさらに強力になっている。海外で行われたminimally classic CNVとoccult CNVを対象にした臨床研究では0.3mgと0.5mgの4週毎の硝子体内投与によって3か月後視力は改善し、12か月後0.3mgで6.5文字、 0.5mgで7.2文字、24か月後それぞれ5.4文字、6.6文字の視力の改善が維持された(数字はそれぞれETDRS視力による)。また、Predominantly classic CNVを対象にして同様の方法で行われた臨床研究でも3か月後視力は改善し、12か月後0.3mgで8.5文字、0.5mgで11.3文字、24ヵ月後それぞれ8.1文字と10.7文字の改善が維持されている(5文字は小数視力表の約1段に相当)。わが国の同様の臨床試験では0.5mg投与開始6か月後9.0文字、12か月後10.5文字の改善が得られた。硝子体内投与の際の眼内炎の発症は1/1200~1/2000程度とされている。わが国の臨床試験に際しては、眼内炎の発症はなく、一過性の高眼圧が認められる程度で、重篤な有害事象は報告されていない。中心窩CNVに対して、これほどの視力改善が得られる治療法はこれまでなく、治療の第一選択として最も多く用いられている。しかしRanibizumabは全てのVEGFを阻害するため正常なVEGF-Aの作用を阻害する可能性がある。一過性脳虚血発作、脳梗塞の既往がある場合にはそれらが再発しやすくなる可能性があり、riskとbenefitを考えて投与を決める必要がある。改善された視力を維持し、なるべく安全に使用するために、一般臨床ではRanibizumabは、投与開始時には連続3か月間、月1回、計3回の投与を行い、その後は1か月に1回、視力や眼底検査、OCTを行い、必要であれば再投与を行う方法がとられている。 ・Pegaptanib Pegaptanib(マクジェン®)は2008年眼科で初めて承認、発売された抗VEGF薬である。VEGF165分子に対するアプタマーである。アプタマーとは標的蛋白質と特異的に結合する核酸分子であり、Pegaptanibの場合にはVEGF165が標的蛋白であり、VEGF165が抗体と結合するのを阻害する。欧米で行われた検討では6週毎の0.3mg、計9回の硝子体内投与によって54週後15文字未満の視力低下は70%であり、未治療群に比較して有意に良好であることが示された。この成績は欧米におけるPDTの成績とほぼ同じである。わが国において0.3mgを用いて同様の方法で行われた臨床試験では54週後15文字未満の視力低下は79%であった。本剤の欠点はVEGF121など他のVEGF-Aの活性を阻害できないため、抗血管新生作用が弱いことである。しかし、アプタマーであるので免疫性がなく、安全性が高い。抗VEGF薬治療はCNVの活性を抑えるための 導入期と抑えたまま維持するための維持期において複数回の薬物投与が必要である。薬物の特性を考えるとPegaptanibは維持療法に適している。また病変サイズが小さな初期例に対する治療効果が期待できる。
2)光線力学的療法 photodynamic therapy(PDT) Ⅰ)PDTの原理 PDTは肘静脈から光感受性物質(6mg/m2体表面積)のベルテポルフィンを10分かけて静注する。ベルテポルフィンは血中でLDLレセプターに結合する。CNVの血管内皮細胞には多数のLDLレセプターがあるので、ベルテポルフィンにはCNVの内皮細胞に高率に取り込まれる。最も高率に取り込まれた静注開始後15分に、CNVに689nmの弱度レーザー光を照射する。その結果CNV中のベルテポルフィンに光化学反応が起こり、発生した一重項酸素によって傷害された血管内皮細胞に血小板等が付着し、血栓形成によってCNVが閉塞する。 Ⅱ)PDTの適応 眼科PDT研究会の検討では、日本人ではFA所見や病変サイズ、PCVの有無にかかわらず、PDTの適応とされている。ただし視力0.6以上の視力が良好な例では1年後に視力が低下するので良い適応にならない。視力が0.1未満の場合には視力は保たれるが1年後0.1以上の視力がでることは難しいので他眼の状態、年齢などを考慮して施行を決める。PDTの良い適応は、病変が小さい(≦1800μm)場合、PCVの場合である。一方、PEDの中にCNVが存在する場合には治療成績が悪く、病変が大きい場合やCNVあるいはPCVの栄養血管が太い場合には大出血を起こしやすいので、しっかりインフォームドコンセントをとる。 Ⅲ)PDT後の視力 PDTは欧米では未治療に比較して視力低下は少なくてすみ、2年後、3年後、5年後もその視力は保たれると報告されている。わが国では1年後、2年後とも PDT前の視力が保たれると報告されており、欧米に比較して治療成績が良い。日本人で治療成績が良い理由のひとつは、PCVが多く含まれているためと考えられる。PCVではPDT1年後の平均視力はPDT前に比較して改善していて、PDTに対する反応が良い。これは出血や滲出の原因になるポリープ状病巣が容易に閉塞するためである。しかし、異常血管網は閉塞せず、2年後の経過をみると拡大した異常血管網の末端にポリープ状病巣が再発したり、網膜下にCNV が生じることも多い。ただし、それらの病変は中心窩外に起こることが多いため、適切に対応すればPDT前視力は保たれる。 |
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中心窩を含む大きな硝子体出血・網膜下出血 |
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中心窩を含む網膜下血腫・硝子体出血に対する網膜下血腫移動術・硝子体手術 中心窩を含む大量の網膜下出血をおこした場合、出血が新鮮な時期には網膜下血腫移動術、網膜下血腫除去術の適応になる。更に硝子体出血を来した場合には硝子体手術の適応となることがある。 |
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サプリメント |
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欧米の大規模前向き試験において、高用量の抗酸化ビタミンと亜鉛からなるサプリメントは、視力が20/30以上で加齢性黄斑変性前段階の所見(広範囲の中型、大型のドルーゼン)を有する人、あるいは対側眼がすでに進行期の加齢黄斑変性である人では、滲出型加齢黄斑変性への進行を遅延させるのに有用であったと報告された。ルテインは黄斑色素の構成要素であり、青色光から網膜を保護する作用がある。米国では現在ルテインの有用性を調べる臨床研究が行われている。 |
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網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究班から |
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加齢黄斑変性 研究成果(pdf 38KB) |
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加齢黄斑変性
かれいおうはんへんせい
| 研究班名 | 視覚系疾患調査研究班(網膜脈絡膜・ 視神経萎縮症) |
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| 情報更新日 | 平成24年1月10日 |





