間脳下垂体機能障害に関する調査研究

一覧へ戻る

1. 研究班の紹介

当班は1972年に策定された難病対策要綱に基づき1973年7月に発足した「下垂体機能障害調査研究班」をルーツとし、その後ほぼ40年間にわたり班名がわずかに変更されたものの、間脳下垂体機能障害による各種疾患を対象として世界にも誇ることのできる研究成果を集積してきました。間脳下垂体という名前はあまりなじみがないと思いますが、これは「間脳」と「下垂体」の2つの場所を示しています。下垂体はその名の通り大脳の下にぶら下がっている重さがわずか1gにも満たないような臓器ですが、ここからは体の働きを維持する上で重要な役割を持つ8種類のホルモンが血液の中に放出され多様な作用を発揮します。間脳はその下垂体の上に存在する脳の一部分の名前で、さらに間脳の中に視床下部という場所があり下垂体のホルモンの分泌を調整する働きを持ち、下垂体にとっては上司にあたる役割を持ちます。間脳下垂体にいろいろな病変(障害)が起こることにより、下垂体から出るホルモンの量が異常となりいろいろな症状を発生してきます。現在、当班の研究対象疾患は抗利尿ホルモン分泌異常症、プロラクチン分泌異常症、ゴナドトロピン分泌異常症、先端巨大症、Cushing病、下垂体機能低下症の6病態が正式に指定されています。これらの6病態の中にはさらに各々複数の疾患が含まれているため、実際に行う研究の対象は10数疾患にものぼる非常に広い領域をカバーしています。研究を通しこれらの疾患の患者さんが早期に発見され、負担の少ない治療を受け治癒していくことができるよう班員全体で努力を重ねています。

2. 主な研究成果の概要

前述のように当班では非常に多くの疾患の研究を行っているため、それぞれに関する詳細な研究成果を列挙することは非常に繁雑なこととなり、かえって理解しにくくなると思われるため、全体として得られた主要な研究成果を以下に示します。

・病気の成り立ちに関する遺伝子解析を含めた詳細な解明
・病気の成り立ちを理解することにより、
1) 正確な診断基準の作成、
2) 新しい治療方法(薬、手術など)の開発、
3) 適正な治療法選択基準の設定
・患者さんの治療前後の状態を長期に調査することにより、
QOLの維持、介護の状況等の情報をも含め蓄積し
それをもとにした行政施策への反映

3. 研究班としてトピックス的な話題など

2009年度半ばに、当班の関与する間脳下垂体疾患の7病態(上記6病態に下垂体性TSH分泌異常症を加えたもの)が特定疾患治療研究事業(難病医療費支援制度)の対象疾患に指定され、診療費が軽減・免除されることになりました。この治療研究事業への指定に向けては、歴代の当班班長が班活動の一環として取り組んで来た長い経緯があり、また関連する患者会の活動をはじめとする社会的要請も強く、ようやくここに実現できました。この制度の立ち上げにあたっては当班が認定の基準を作成し、さらに今後各自治体を窓口とした申請・認定作業などにおいても協力体制を構築し円滑な運用ができるよう進めて行く所存です。