消化器系疾患分野|慢性偽性腸閉塞症(平成22年度)

まんせいぎせいちょうへいそくしょう
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1. 概要

慢性偽性腸閉塞症は食道から大腸までの全消化管運動機能障害で、物理的な腸管の閉塞がないにもかかわらず腸閉塞様症状をきたす原因不明の難治性疾患である。本疾患の罹病期間は長期にわたり罹患患者の生活の質を極度に低下させているが,我が国における現状は過去の文献をみても少数の症例報告があるのみで詳細は全く不明である。今回の研究では当該疾患の現状を全国の消化器内科・消化器外科医に調査を依頼して行うものである。

2. 疫学

推定数百名とされるが詳細な疫学は不明である。本研究は昨年度に引き続き我が国で本疾患に対する全国初の調査である。

3. 原因

疾患の原因は不明であるが,神経疾患や膠原病に続発する病態が知られており,関連が示唆されている。おそらく多くの原因が関連しあい発症する病態と考えられている。わが国における詳細は不明であり,今回の調査で其の点を明らかとする一助としたい。

4. 症状

消化管機能低下に伴う,下痢,便秘,腹痛,悪心,嘔吐などを日常的に起こしている症例が多い.また腸閉塞が悪化した場合入院加療が必要となり,これらの症状に加え,発熱さらには腸管の壊死等に伴う重篤な症状をきたすことがある。

5. 合併症

腸閉塞の悪化に伴う腸管壊死等,手術が必要な病態が発生することがある.また腸管からの栄養吸収障害が発生し,低栄養,また,中心静脈栄養が必要となる症例もある.なお最も問題となる合併症は,永年にわたり疾患,症状が持続するため生活の質(Quality of Life)が低下することである。

6. 治療法

治療法は定まっていない。試みられている方法としては,腸管内細菌フローラのコントロール(抗生物質,整腸剤等),便の形状,排便のコントロール(ポリカルボフィルカルシウムや他の下剤),消化管運動に関する薬剤(モサプライドやエリスロマイシン),さらに海外ではソマトスタチンアナログや小腸移植などが試みられている。

7. 研究班

慢性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究班