メニュー


HOME >> 病気の解説(一般利用者向け) >> 重症急性膵炎(指定難病ではありません)

重症急性膵炎(指定難病ではありません)

じゅうしょうきゅうせいすいえん

この病気は新たな制度の対象とならない為、医療費助成が受けられるのは平成26年12月末までです。
平成26年12月31日以前に認定されている方は、平成27年1月以降も医療費助成が受けられます。
(認定基準、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

おことわり

2008年 10月に急性膵炎を診断するための基準と急性膵炎の重症度を決めるための基準が改訂されています。それまでは、軽症、中等症、重症の3段階に分けられていたものが、軽症と重症の2段階に分けられるようになりました。このホームページの記載の多くは、厚生労働省の難治性膵疾患に関する調査研究班が、2007年に急性膵炎をおこした患者さんについて行った全国疫学調査をもとに記載してあります。この全国調査は2007年当時の、古い重症度判定基準に基づいて行われているため、現在の基準とは少し異なることをご了承ください。

1. 重症急性膵炎とはどのような病気ですか

急性膵炎とは、食物の消化に必要な消化酵素(炭水化物を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなど)と血糖の調節に必要なホルモン(血糖を下げるインスリンと血糖を高くするグルカゴンなど)を分泌する膵臓に、急激に炎症が起こり激烈な腹痛がおこる病気です。本来、食べ物を溶かす働きをする消化酵素が、膵臓自身を溶かしてしまう病気ともいえます。急性膵炎の中には、膵臓が腫れるだけで容易に回復する比較的軽症のもの(浮腫性膵炎)から、膵臓や周囲に出血や壊死を起こし(壊死性膵炎)、急激に死に至る重症例まで様々あり、その程度により軽症と重症とに分類されています。このうち、重症急性膵炎とは膵臓だけではなく、肺、腎臓、肝臓、消化管などの重要臓器にも障害を起こしたり(多臓器不全)、重篤な感染症を合併する致命率の高い急性膵炎を指します。重症急性膵炎は、10%近くの方が亡くなられる重い病気で、厚生労働省の特定疾患(いわゆる「難病」)に指定されています。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

 急性膵炎の患者さんは年々増加しています。厚生労働省の研究班が行った全国調査(2007年全国調査)によりますと、2007年1年間に急性膵炎で診療を受けた患者さんは57,560人と推定されています。現在と基準が少し違いますが、重症例の割合は21.6%でした。

3. この病気はどのような人に多いのですか

急性膵炎は男性が女性の約2倍で、男性に多い病気です。幼児から高齢者まであらゆる年齢で発症し、2007年の全国調査では患者さんの平均年齢は59.3歳でした。男性は50歳台が最も多く、平均年齢は56.6歳、女性は70歳台が最も多く、平均年齢は64.6歳でした。一方、重症急性膵炎は、男性が女性の1.8倍、平均年齢は62.4歳でした。男性は70歳代、女性は80歳代が最も多く、男性の患者さんの平均年齢は58.9歳、女性は68.6歳と、男女とも急性膵炎全体の発症年齢より高齢でした。

 急性膵炎はアルコールと胆石が2大原因ですので、お酒をよく飲む人や胆石持ちの人に膵炎が起きやすくなります。 

4. この病気の原因はわかっているのですか

2007年の全国調査では、急性膵炎の原因としては飲酒によるものが31.4%で最も多く、第2位が胆石によるもので 24.4%、第3位が原因を特定できないもの(特発性)で16.7%でした。男性ではアルコール性が最も多く42.7%を、女性では胆石性が最も多く35%を占めます。アルコールが急性膵炎をどのようにして起こすかは、まだよく解っていません。大酒家のうち、膵炎をおこす人は数%しかいませんので、体質など、ほかに何らかの要因があると考えられます。

5. この病気は遺伝するのですか

急性膵炎をおこしやすくする遺伝子については、まだよく解っていません。極まれですが消化酵素の遺伝子異常により発症する急性膵炎があります。たんぱく質を分解する消化酵素の一つであるトリプシンの遺伝子に異常があると、膵臓の中で活性化されたトリプシンがたんぱく分解酵素として長時間働き、急性膵炎を発症します。男性女性に関係なく、この遺伝子異常を持っている人が急性膵炎になりますが(常染色体優性遺伝)、実際には、この遺伝子異常を持っていても2割ほどの人は膵炎を起こしません。他の原因の急性膵炎と異なり、多くは20歳以下で発症します。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

急性膵炎の最初の症状として最も多いのは、持続的で激しい上腹部痛で88.6%に認められています。しかし、腹痛の程度は個人差が大きく、腹痛の程度と膵炎の重症度とは相関しません。稀ではありますが急性膵炎でも腹痛を訴えない無痛性急性膵炎もあります。急性膵炎の最初の症状として嘔気・嘔吐(18.7%)、背部痛(11.1%)、発熱・悪寒(5.0%)、食欲不振(3.0%)などもみられています。

 多くの場合、腹痛は上腹部全体に見られます。膵臓は、胃の裏側で背中側にはりつくように存在しますので、急性膵炎の時には上腹部の痛みに加えて、背中の痛みを生じることも多くあります。痛みが強い時には、上を向いて寝ると腫大した膵臓が脊椎に圧迫されて痛みが強くなりますが、膝を抱くように体を丸くしますと膵臓が脊椎に圧迫されなくなり痛みが楽になります。

 何時間もムカムカしたり、吐いたりすることがありますが、吐いても腹痛はよくなりません。さらに、重症急性膵炎では、顔面・皮膚は蒼白となり、冷汗があり、血圧は低下(血圧80 mmHg以下)、心拍数が増加(90回/分以上)してショック状態に陥ったり、呼吸が浅く・速くなり(20回/分以上)、尿量が減少して腎不全になります。また、意識障害や黒色便(消化管出血)、黄疸が見られることもあります。膵炎で破壊された膵臓に細菌感染がおこると発熱が生じ、進行すると細菌が全身にまわり、重い感染症をおこすことがあります(敗血症)。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

  一般的な急性膵炎の治療として、まず膵臓を安静に保つために食事や水分の摂取を禁じます。血圧と循環状態を正常に保てるように大量の点滴輸液を行い、膵臓内での消化酵素(たんぱく分解酵素)の作用を阻止するために、たんぱく分解酵素阻害薬を投与します。さらに、重症急性膵炎の場合には、感染症を予防するために抗菌薬も投与します。重症急性膵炎では、循環管理や呼吸管理などの集中治療が必要になることが少なくありません。

動注治療

重症の急性膵炎では、しばしば膵臓を養う血流が低下して、その部分の組織が死ぬ(壊死)ことがあります。膵臓の壊死が広い範囲に及んだ場合には、静脈から投与した薬剤が膵臓の壊死部に十分に到達しません。動注治療は、膵壊死部に高濃度のたんぱく分解酵素阻害薬と抗菌薬が到達するように、壊死部位へ流入する動脈にカテーテルを留置して、たんぱく分解酵素阻害薬と抗菌薬を持続的に投与する治療法です。
この治療は、重症急性膵炎の患者さんが適応となり、軽症の患者さんは通常対象外です。急性膵炎の早い時期には膵臓に炎症が起きていますが、3~5日以降になりますと、膵臓以外の臓器(肝臓、肺、腎臓など)に炎症が広がっていきます。このような状態になってから動注治療を開始してもあまり効果はありませんので、急性膵炎が発症してから3日以内(48時間以内が最も望ましい)の患者さんが対象となります。
なお、急性膵炎に対する動注療法は現在のところ保険が適応されません。 

持続的血液濾過透析

慢性腎不全の患者さんに行われている血液透析と類似の治療法です。重症急性膵炎の場合、膵臓の炎症が全身に広がる理由の一つとして、血液中にサイトカインと呼ばれる物質が増えることが考えられています。血液浄化療法は、血液中のサイトカインを除去したり、余分な水分を濾過して腎臓の働きを助ける治療法です。 

その他の治療

膵臓の壊死部に細菌感染がおこり化膿した場合には、体外から化膿部位へチューブを入れて、膿を体外へ誘導したり(ドレナージ術)、手術をして膵臓の壊死感染部分を除去することもあります。胆石が膵管の出口を塞いで膵炎が悪化したり、黄疸が進行する場合には、内視鏡で胆石が排出されやすくなるような処置を行います。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

急性膵炎は通常、持続的で激しい上腹部痛で発症します。急性膵炎の中には、膵臓が腫れただけで容易に回復する比較的軽症のもの(浮腫性膵炎)から、膵臓や周囲に出血や壊死を起こし(壊死性膵炎)、急激に死に至る重症例まで様々あり、その程度により軽症と重症とに分類されています。このうち、重症急性膵炎では膵臓だけではなく、肺、腎臓、肝臓、消化管などの重要臓器にも障害を起こしたり(多臓器不全)、重篤な感染症を合併することがあります。急性膵炎全体では約2%、重症急性膵炎では約8%の方が治療にも関わらず、亡くなられます。急性膵炎の長期予後は比較的良好であり、多くは発症前と同じ状態にまで回復して社会復帰することが可能とされます。しかし、膵臓が広い範囲で壊死に陥った場合には膵臓の機能が欠落し、糖尿病や消化吸収障害などの後遺症が出ることがあります。これらに対しては適切な治療(食事療法やインスリン投与、消化酵素剤の服用)により対応します。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

アルコールが急性膵炎のもっとも多い原因ですから、過度な飲酒を控えることが大変重要です。1日あたりの飲酒量が増えるに伴い急性膵炎のリスクが上昇することが知られています。急性膵炎の発生要因に関する研究によると、急性膵炎発症前24時間に100グラム以上のアルコール相当量を飲酒した場合には、飲酒しなかった場合に比べて膵炎のリスクは4.4倍に上昇します。同様に、膵炎発症前1か月間の飲酒量(アルコール相当量)が1日あたり50-99グラムでは3.5倍、100グラム以上では5.4倍に膵炎リスクが上昇します。

10. 医療費の補助制度がありますか

厚生労働省の難病対策事業の一つとして、特定疾患治療研究事業、すなわち医療費の公費負担制度があります。重症急性膵炎はその対象疾患の一つです。重症急性膵炎と診断されますと、患者さんまたはその家族の方が「特定疾患医療費受給者証交付申請書」と「住民票」、さらに担当医師が記載した「臨床調査個人票」を添えて患者さんが住んでおられる地域を管轄する保健所、あるいは県庁へ申請します(どちらへ申請するかは地域によって異なります)。承認されますと、原則として6か月間の医療保険の自己負担分を、国と都道府県とで折半して負担します。しかし、申請後の医療費しか公費負担の対象になりませんので重症急性膵炎と診断されたら急いで手続きを行う必要があります。また差額ベット代などの費用については対象外です。

 6か月後の更新を申請出来るのは、1) 膵膿瘍(すいのうよう、膵臓に膿がたまっている)、2)膵周囲膿瘍、3)膵液ろう(膵液の漏れ)、4)腸ろう(人工肛門など)のいずれかに該当し、更新理由が明記されている場合に限ります。消化吸収障害や糖尿病の治療目的などは更新理由に該当しません。
 

11. 全国調査を行っています

厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性膵疾患に関する調査研究」班 (主任研究者 下瀬川 徹)では、わが国における重症急性膵炎の実態を把握するために、急性膵炎症例に関する全国疫学調査を実施しております。

 厚生労働科学研究―循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業「わが国における飲酒の実態把握およびアルコールに関連する生活習慣病とその対策に関する総合的研究」班(主任研究者 樋口進)では、アルコール性急性膵炎・慢性膵炎患者の全国調査を行っています。

 

12. この病気に関する資料・関連リンク

2008年に急性膵炎の診断基準ならびに重症度判定基準が改訂されたことに伴い、2009年に「急性膵炎診療ガイドライン2010」が発刊されています(急性膵炎診療ガイドライン2010改訂出版委員会 編 日本腹部救急医学会、日本肝胆膵外科学会、日本膵臓学会、日本医学放射線学会、厚生労働省難治性疾患克服研究事業 難治性膵疾患に関する調査研究班。発行所:金原出版株式会社)。これは、日本膵臓学会のホームページ上で閲覧することができます(http://www.suizou.org/APCGL2010/APCGL2010.pdf)。 
 


治験情報の検索:国立保健医療科学院
※外部のサイトに飛びます。

情報提供者
研究班名 消化器系疾患調査研究班(難治性膵疾患)
研究班名簿   
情報見直し日平成27年3月18日